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メキシコ南部のオアハカという町に、小さな宿があります。伝統的な装飾品や調度品がカラフルに飾られたステキな宿です。

3年前、その小さな宿を予約するには電話しかありませんでした。
しかも対応はスペイン語オンリー。
英語がまったく通じずに、メキシコシティ空港の公衆電話の前で一人で呆然としていると、近くで掃除係のおばちゃんが床を掃いていました。彼女に頼もう!とひらめいて、「これで、自分の代わりに宿へ電話してくれませんか」と持っていたガムをみせて必死に予約を懇願しました。

おばちゃんは、あっさり「シー」と頷いて引き受けてくれました。しかし、彼女は英語がわからず、会話の頼みはペンと紙、身振り手振りと付け焼刃で覚えたヘッポコスペイン語だけでした。名前や泊まる日付を苦心して伝えると、彼女は受話器を握り、「ハポネスがトマリたいと言ってるわ。コバヤシというナマエでカネはなさそうだけどイケメンなの。トメテやってくれない」(推測含む)と掃除をしている姿からは想像もできない凛としたハキハキ声で予約をしてくれました。

宿との電話が終わったあと、おばちゃんは満足そうに受話器を置いて、「やったわ」と満面のドヤ顔で白い歯を見せてくれました。あんたの人生、まとめて面倒みてあげる、というような深大な笑顔は今でもはっきり覚えています。

その電話でしか、スペイン語でしか予約が取れない宿が、ネットで、英語で、予約ができるようになっていました。
あの空港での出来事、見知らぬおばちゃんの優しさや一体感を味わった身としては、予約が全てモニター越しに完結してしまうのは寂しいことです。
抗し難いネットとグローバル化の中で、人とのリアルな交流の場は減り、言語の壁はますます低くなるのでしょうか。でも、言葉なんて通じないほうが通じると僕は思っているし、いい人も悪い人もひっくるめて、人に会うことこそが僕にとっての旅です。便利の追求が、旅の楽しみをも奪ってしまわないかとソワソワしています。

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2011年9月 4日 18:33 | | コメント (0)