幻灯の八月:幻灯朗読会とWSレポート

幻灯の八月、後半はイベントが続きました。どの日も印象深く...でももう遠い日のような気がしますが、ぽつぽつ思い出しレポートしてみます。長いですのでごゆるりと。

まず17日、土曜日の幻灯朗読会。ゲストは歌人で作家の東直子さんと、絵本作家で歌人でもある陣崎草子さん。お二人は、東直子さん監修「新鋭短歌シリーズ」でもご一緒されていて、陣崎さん初の歌集も近日出版予定です。

東直子さんがお話を作った絵本『ぷうちゃんのちいさいマル』朗読から始まりました。

たんじあきこさんの原画を見ながら。半濁点がつくのは「は行」だけで「ふ」という形が一番可愛いと思ったと東さん。『ぷうちゃん〜』をよく見ると形が見えてきますね。

陣崎さんからの質問というかたちで、東さんの創作を掘り下げていくトークもとても面白かったです。「靴下ってなくなりますよね」東さんの短歌から『ぷうちゃん〜』も丸をなくす話だという共通点が浮かび上がったり。キーワードは「喪失」「こわい」など。

そして最後にお二人の即興朗読リレー。

東さんが描いた「ふ」や「ぷ」や「ぶ」を陣崎さんが映像に仕立てたものを背景に流し、その場で宙を見上げ物語の糸を絡ませあうお二人。スリリングな往復と圧巻のラストシーンに鳥肌でした。茄子、婆...
東さん、陣崎さん、ご参加のみなさま、ありがとうございました!


続いて18日、日曜日の幻灯朗読会。絵本『めかくしおに』共著のお二人、もとしたいづみさんとたんじあきこさんのご登場です。

もとしたさん作の絵本『ふってきました』(絵:石井聖岳)朗読をスタートに、『めかくしおに』をご一緒するきっかけとなった作品『春はあけぼの』(絵:たんじあきこ)を読んでいただきました。アフロ頭の清少納言ちゃん、いいなあ。

日が落ちていく時間帯に、もとしたさんの落ち着いた声で読まれる『めかくしおに』はヒンヤリと、チリンという鈴の音にドキッとしました。

そして制作裏話など。もとしたさんが最初に考えたのは舟で姉弟がアチラのお宿にいく話だったとか。そのイメージを描いたたんじさんの絵も見せていただきました。そういえば、前日の東さんと陣崎さんとのトークでも、たんじさんの絵はポップで可愛いけれどそれだけじゃない「こわい」要素があるというお話をされていました。そこが『ぷうちゃん〜』の世界観を面白くしていると。
お客さんの中には絵本作家や編集者の方もいらして「こわい絵本」を作るうえでの表現をどこまでにするかなど興味深い話もたくさんありました。本気で怖い絵本は児童書のコーナーに置かれないとか...。怖いこと痛いことを想像できるのも大事なことと思うのですが。不思議体験の話も面白かったです。(小さいおじさん、見たことありますか?)

今回のイベントでは素敵なお菓子が場を盛り上げてくれました。unpeu遠藤順子さんが『めかくしおに』をモチーフに作ってくれたキツネおこし!かわいいだけでなくすごく美味しいと大好評でした。いつかまた作ってほしいなあ。17日には『ぷうちゃんのちいさいマル』マルとテンのクッキーがお土産でした。写真撮り忘れて食べちゃった...。こちらでご覧ください→ unpeu ブログ

もとしたさん、たんじさん、ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!

たんじさんの貴重な絵本ラフ画ファイルもお預かりしています。

原画展示は『めかくしおに』に変わりました。「文字入れるところを空けるの忘れるくらい描くのが楽しかった」(笑)というたんじさんの鮮やかなモノノケたちをすみずみまでお楽しみください。


長いですね。ふう...ここらでちょっと休憩。


そして24日土曜日、今まで誰も経験したことのない一日がかりのイベントになりました。

第一部はタダジュンさんとさかたきよこさんによる紙版画ワークショップです。紙版画の作り方、行程はタダジュンさんのブログをご覧いただくとして、皆さんの制作風景をどうぞ。

皆さん、いい顔してますね〜。それぞれに物語の役者となるにふさわしい個性的な版画たちが生まれました。第一部ワークショップはここで終了です。

ここからが怒濤の二時間!!ワークショップで生まれた紙版画の版の方をお預かりし、シーンの撮影、編集、詩作、読み合わせを一気にやるのです。

一部のシーンはあらかじめ撮影してあるにせよ、肝心なのは生まれたばかりの役者たちをどう映像に登場させるか、そして参加者の方たちに書いてもらった言葉をどうストーリーに編み出すか、この限られた時間と場所でのライブ制作。

さかたさん、タダさん、陣崎さんの集中力はすばらしく感動的でした。(いや、正確にはまだこの時点では緊迫しすぎていて感動の感をためこんでいたのかも)

そして第二部、幻灯朗読会が始まりました。

まず、陣崎草子さんによる幻灯朗読作品『大地を駆けるいきもの』

タダジュンさんとさかたきよこさん初の映像作品『長靴の夜の話』

『長靴の夜の話』予告編はこちら

野田雅子さんのお仕事『Keep Silence』(Predawn/MusicVideo)

そしていよいよ、本日のメイン映像のはじまり。ついさっきその場で繰り広げられていた紙版画ワークショップの風景が動画で映し出され、本編『月の石』へと続いていきます。

ウレシカ号に乗り込むのは、紙版画の動物や人やそれ以外のモノたち。「八月は許されている...」緩やかに時に速く船を漕ぐように、陣崎さんが詩を紡ぎ出します。

映像の中のシーンより

(画像:さかたきよこさんよりご提供)

私は機材の操作もあったので、この幻灯朗読を最初スクリーンの裏側から見ていました。ワークショップの映像とウレシカ号の乗組員たち。そして作家三人の背中を思い出して、目の辺りがうわうわしてしまいました。(二回目に正面から撮影しながらも後日映像を見ても同じ現象が...)
描き込まれた完成形の絵ではなく、スケッチの線のような勢いと美しさのある映像。機会があればみなさんにもぜひ陣崎さんの朗読とともにライブで見ていただきたいです。

イベントの最後にプレゼント企画がありました。陣崎さんの短歌朗読にあわせて、タダさんとさかたさんがその場で紙版画を制作、その版画をお客様1名に抽選で差し上げるというゴージャスなもの。

陣崎草子さん自作の短歌から選んだ5首を詠みます。

薄暗がりにカリカリ、シャシャシャ、と版を引っ掻き描く音。

タダさんとさかたさんそれぞれ版を作り、組み合わせて刷り、一つの絵になるという、お二人も初めてというコラボレーション作品。

即興で生まれた作品。抽選に当たった方がうらやましい!!
魚と女性。詠まれた5首の中からお二人が版画の題材に選んだモチーフは、陣崎さんがこれから出版される歌集の巻頭に選んだ歌だそう。それも嬉しい偶然でした。

夢のような夏の一夜。タダジュンさん、さかたきよこさん、陣崎草子さん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

幻灯の八月 〜真夏の夜シカ〜 は31日(土)までやっています。映像作品はランダムに上映していますので、リクエストがあれば店主にお気軽にお声掛けてください。

幻灯の八月 〜真夏の夜シカ〜
〜8月31日(土)
 open 14時〜21時
★8月は夏時間として、14時から21時の営業となります。

【出展作家】
さかたきよこ陣崎草子関野宏子タダジュンたんじあきこ野田雅子濱中大作

2013年8月28日 | 展覧会・イベント情報, ワークショップ・イベント